俺がお前を夢の舞台へ

蒼空の気持ちと、勇翔の気持ちと

「ねぇ…蒼空…」


「んー?」


シュッという投球音に紛れて返事が返ってくる。


「…やっぱり何でもない」


昨日の喧嘩を目の当たりにして、蒼空が遠くに行ってしまったような気がした。


いつものように、うちで投球練習をしているのに。


いつものように、そんな蒼空を眺めているのに。


「腹でもへった?」


「あ……いや…別に…」


勧誘。


私には勇翔を野球部に引き入れるという大きな使命がある。


蒼空は…きっと嫌がるよね。


“勇翔を野球部に引き入れたいんだけどどう思う?”


何度も、そう聞こうと思ったタイミングがあった。


でも、結局聞けなかった。


いつも肝心な時に腰が引ける。
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