隣の不器用王子のご飯係はじめました



指の先が、小野山さんの頬に少しだけ触れた。

柔らかな感触に、俺は慌てて手を引っ込める。

……だめだ、このままでは寝込みを襲いかねない。違うことを考えよう。



違うこと。

そうだ、今日は小野山さんに一つ料理のレシピを教わることができた。

レシピのメモも送ってもらったし、今度一人でも作ってみよう。

玉ねぎとご飯を炒めてケチャップライスを作ったら、上に掛ける卵は半熟のスクランブルエッグにする。

そして卵の上にケチャップをかけて完成。


頭の中で工程を再現しているうちに、完成したオムライスに何やら文字を書いていた小野山さんの姿を思い出した。

読み取れたひらがなの“すき”を読みあげたら、彼女はひどく慌てていた。


さして気にしてはいなかったが、後になって考えると一つ思いついたことがある。

姉さんが描いた漫画に、ヒロインが無意識のうちに片思いしている相手の名前をノートに書き、それに気づいて赤面するシーンがあった。



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