隣の不器用王子のご飯係はじめました



あの由梨がすごくテンパってる。

タッパーに入ったカップケーキを差し出しながら頭を下げている。


遠坂くんは、そんな由梨の様子を冷たい目で睨んで……

……いや、違うな。今ならわかる。

たぶん、話したことのない女子からいきなりお菓子を差し出されて、どう対応したら良いのかわからないんだ。



「えっと……俺がもらって良いってこと?」



遠坂くんはしばらく悩んでいたみたいだったけど、ようやくそう言って私に確認する。

私が静かにうなずくと、遠坂くんは由梨が持つタッパーからカップケーキを一つ取り出す。



「じゃあ……いただきます」

「あ、あの、在花は美味しいって言ってくれたけど、本当に大した物じゃないし遠坂くんのお口に合わなければ全然食べてくれなくて大丈夫なので!」



カップケーキを口に運ぶ遠坂くんを見て、由梨はまた騒ぎ出す。

遠坂くんは一口かじってゆっくり咀嚼し、小さくうなずいた。


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