片翼を君にあげる②

幼い頃は、まさか自分が普通じゃないなんて思いもしなかった。

家で飼っていた猫や空を飛ぶ鳥、散歩してる犬が何を言っているのか分かったり、街中で自分達よりも少し透けている人や浮いている人が見えたりするのは自分だけじゃない、って。
毎日が騒がしく感じるのは当たり前なんだ、って思ってた。

違う、って気付いたのは、母方の曾祖父(ひいじい)さんであるアルバートが亡くなった時。
遠くに住んでいる筈の曾祖父ちゃんが夜中に突然家に現れて、以前とは違って透けた人になって宙に浮いてて『さようなら』『元気でな』って俺に言って、微笑みながらフッて消えたんだ。
姉貴も兄貴もその場に居た筈なのに『誰と話してたの?』って驚いた顔してて、俺はあれ?って思った。

それから、何よりも1番"違う"って確信したのは葬儀の時。
その場所には、今まで見た事もない数のたくさんの透けた人が居て……。俺はその透けた人達が、もうすでに亡くなっているこの世の人でない事を知ったんだ。そして、その人達が見えるのも、その人達の声が聞こえるのも自分だけだと言う事を……。
そこでは、この世に未練を残した苦しみの声や嘆きの声。中には、怨みや憎しみの声も、たくさん聞こえた。
耐え切れなくて、パニックを起こして倒れて……。俺が気が付いたのは、葬儀が終わった三日後だった。


家から出るのも、家族以外の人に会うのも、怖くて怖くて仕方なかった。
同じ希血で、同じように特殊な能力(ちから)を持つ父さんが居なかったら、俺はきっと引き篭もりの人生を送っていただろう。

漆黒の目(左目)を眼帯で塞げば能力(ちから)を防ぐ事が出来る、と言う解決方法を見付けてくれたのも父さんだった。
以来、お風呂に入ったり顔を洗う時以外は眼帯を着ける事で抑えてきた俺の能力(ちから)
でも、…………。

今、封印を解いて裸眼で過ごしたら?
俺は一体、どうなるんだろうーー?

……
…………。
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