片翼を君にあげる②

(5)ジャナフside


ここは夢の配達人隠れ家内にある訓練施設の闘技場。
中央には対戦者達が戦える広い運動場のようなスペースがあり、その周りを低い石壁が円形に覆い、その外側は見学者用のスペースになっている。
ボクは当然、見学者用のスペースに最高責任者(マスター)とノゾミさんと。中央の対戦者達用のスペースに、ツバサと瞬空《シュンクウ》さんが居る。

「まずは、武器をお選び下さい。
ちなみに私が使うのはこれ。ツバサ様は存じておられるでしょうが、我が国で主流に使われる曲剣(シャムシール)です」

瞬空(シュンクウ)さんは腰に差していた剣を手に取って見せながら、ボク達の方にも聞こえる位の声でツバサに言った。

曲剣。ドルゴア(ボクの)国でも扱う人がいるから、見た事があった。
それは鋭い刃と独特の曲がった刀身のフォルムが特徴の剣。武器によっては直剣を凌ぐ攻撃速度を持っておりいて、全体的に軽く、でも技量を求める物が多い。
主な攻撃手段は回転攻撃や振り回しによる斬撃。

「曲剣を使った事がないツバサ様に、同じ物を使って勝負とは言いません。
そちらに剣、槍、弓、銃、など。あらゆる武器を一通りご用意しております。どうぞ、お好きな物をお選び下さい」

そう、色んな武器が置かれた台の上をツバサに見せながら言う瞬空(シュンクウ)さんの口調は、丁寧だけど「貴方が何を使っても関係ない」と、言っているように聞こえた。
一方のツバサの表情は、ボクの位置からは後ろ姿でよく分からない。

その光景を見つめながら、ボクはここに着くまでに交わした最高責任者(マスター)との会話を思い出した。

……
…………。

「あのっ……。その、ツバサが負けるって分かっているなら、何で……」

「ーー瞬空(シュンクウ)との下剋上を決めたのか?……ですか?」

「!……はい」

最高責任者(マスター)はツバサの事を応援してくれているんだと思っていた。だから、負けると分かっているのに勝負させるのであれば、何だか複雑な気持ちだったんだ。
それに下剋上を失敗すればまた改めて再戦という手間も時間もかかるし、何より、その結果がサリウス様に伝わればツバサの評価や夢の配達人の評判だって落ちてしまう可能性があるのに……。

そんな考えを抱いていると、最高責任者(マスター)が言った。

「良い質問ですね。
ジャナフ、君は自分が思っている程馬鹿ではありません。もう少し自分に自信を持ちなさい」

「えっ?……あ、はい!
……。!……じゃなくて、っ……」

「ツバサには、弱点があります」

「!……弱点?」

予想外の時に褒められて、一瞬ホワッとしてしまったがすぐに話を元に戻そうとすると、最高責任者(マスター)は言葉を続けた。そして、ボクに質問をする。
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