片翼を君にあげる②

痛みと、流れ出る血で朦朧としそうだった意識が一気に戻るーー。

『アメフラシの巫女がいなくなれば、任務は達成出来ない。そうすれば、瞬空(シュンクウ)さんとの下剋上もなくなって……ツバサ(そいつ)は終わりだ』

……なん、だって?

『……ああ、そうだよ。奴等、思ったより上手くやってくれたみたいだな。
おまけに、アッシュトゥーナ家の令嬢まで巻き込めて……オレは本当についてるよ』

……
…………蓮葉(レンハ)とレノアが、なんだって?

……、……。

セトの言葉が響いた。
すると、ドクンッと、鼓動が大きく鳴って……また"あの声"が俺に囁く。

《ホラ、ナ?ニンゲンナンテ、クズダ》

……。

《ミニクイ、ヨクノカタマリダ》

……ああ。そう、だな。

《ミカエシテヤロウジャナイカ》

見返す……?

《アア、ソウダ。
ニンゲンナンテ、オロカナイキモノ。ヤッテシマエ……!!》

ーー……そうだな。
こんな愚かな生き物、消してもいいよな?

俺の中で何かがヒビ割れて、ドス黒い何かが溢れ出したような気がした。同時に思った。

今なら、何でも出来るってーー。

狼に噛まれて緩んでいた眼帯の紐が切れて、俺の左目から外れて地面に落ちた。噛まれた傷は塞がり、血も止まった。
そんな俺がゆっくり立ち上がると、いち早く異変に気付いた狼達は唸り声を上げる。それに反応して、セトも俺が立ち上がった事に気付いた。
さっきまで、ジャナフと話して笑っていたセトだったが……。俯いていた顔を上げて、俺と目が合うとビクッと驚いた表情をして、足を一歩後ろに下げた。けど……。

もう、遅い。
お前には、今から天罰を下そうーー。

そう思った俺が笑みを浮かべると、振り返ったジャナフも驚いたように目を見開いて、震えながら口を開く。
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