僕が愛した歌姫
そして、オカマ店員が持っていたのは数種類の本格的な警備服だった。


その1つを手にとってみると、肩の部分に知っている警備会社の名前がプリントされていた。


「これ、本物?」


「そうよぉ~? 警備員のコスプレ服なんて滅多に見かけないから、知り合いから譲ってもらったり定年を迎えた人から頂いてくるのよ」


なるほど、これならバレにくいかもしれない。


警備員に知り合いがいるという事は……。


試しに俺はあの病院が雇っている警備会社を知っているかと聞いてみると、オカマ店員は2つ返事で大きく頷き、そこの制服を差し出してくれた。


「定年退職したオジサマのだからちょっと古くさいけど、いい香りがするのよぉ」


そう言われて少しだけにおいをかいでみると、オヤジ臭が鼻をついて顔をしかめた。


「ね? ダンディなオジサマの香りでしょ?」
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