僕が愛した歌姫
☆☆☆

アルバムを1枚聴き終わったあと、俺はふぅと息を吐き出してヘッソフォンを外した。


リナの歌声の余韻に浸ろうとした、その時――。


「満足か?」


ヒロシのそんな声が俺を現実へと引き戻した。


頭の中に巡っていたリナの歌声が、一気にかき消されてしまい、俺はヒロシを睨みつけた。


「まだいたのかよ」


「いちゃ悪いか」


とか言いながら、いつの間に売店まで行ってきたのか、パンくわえてるし。


「で、どうだった?」


「どうだったって?」


「CDだよ、リナ姫のCD」


あぁ。


「ん……まぁ、いいんじゃね?」
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