僕が愛した歌姫
キスの歌
ラセン階段を軽快に下りていく俺。


カンカンカンと、リズムを刻む松葉杖。


これってさ、ある意味すごくいいリハビリになってると思うんだよな。


気分もノリノリで昼間聴いたリナの曲を口ずさむ。


今日はいてくれるかな?


毎日は、さすがに来ないかな?


そんな事を思いながら立ち入り禁止の扉を開ける――。


「こんばんは」


すると、すぐに少し遠くからリナの声が聞こえてきた。


「こ、こんばんは」


途端に緊張して背筋を伸ばす俺。


今日も、いた――。
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