僕が愛した歌姫
その横顔がすごく綺麗で、引き込まれる。


「今は?」


「え?」


「今なら、どんな歌詞を書くの?」


「今……は……」


呟き、言葉を切る彼女。


しばらく真剣な表情で考えていたけれど、結局首をふって「わからない」と、小さく返事をした。


「じゃぁさ、こういうのどう?」


俺は、フェンスの網目からそっと彼女の髪に触れた。


細くてサラサラで、近くで見ると少し茶色かかった髪。


彼女は髪先に触れられたのがくすぐったかったのか、こちらを向いた。


フェンスをはさんで、2人の距離は10センチ。


「『ラブリーキス2』」


俺はそう言って、フェンス越しに彼女の唇を奪ったんだ――。
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