僕が愛した歌姫
☆☆☆

ビクビクと身を縮める俺が連れてこられた先は、近所の小さな公園だった。


アパートやマンションが立ち並ぶ通りの隅っこに、お情け程度に作られた小奇麗な公園に来るのはこれが始めてだった。


「まぁ、座れ」


そういわれて、俺は大人しくベンチに並んで腰を下ろした。


「お前、退院してこれからどうするんだ」


「えっと……」


どうするんだ。


と言われたって。


これまでの生活を続けるしかない。


「まさか、俺の頼んだ事を降りるつもりじゃないだろうな」


ズバリ指摘されて、冷や汗が背中を伝う。
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