玉響なる風は鳴る
葉月は、風音を連れて屋上まで来た。屋上の扉を開けると、吹いた風が2人の胸元に結ばれた赤いネクタイを揺らす。

葉月は、扉を閉めるとそのままフェンスに近付いた。

「……いつもの風音じゃないって、クラスメイトが心配してたよ?」

「……」

葉月の言葉に、風音は葉月から目を逸らした。

「ねぇ、風音……確かに、風音の言う通り……風音が神様だという証拠はない。だけど、風音が人間だっていう証拠もない。颯さん、言ってたよ?僕と真冬が人間でありながら力を使えるのは、僕と真冬の中で神様になろうとしているからだって……僕と真冬ね……颯さんに頼んで、神様の力を解放してもらって神様になったの」

葉月がそう言うと、風音はゆっくりと葉月の方を見る。

(……確かに、葉月の気配が今までと全く違う……颯と同じ気配だ……)

「風音なら分かると思うけど、風音も僕と同じ気配らしいんだ……風音、焦らなくていい。ゆっくり受け入れていけば良いんだよ……人間だろうと神様だろうと、風音は風音。種族なんて気にしなくて良いんだからさ」

そう言って、葉月は優しく微笑んだ。葉月の表情を見た風音は、顔を赤くして葉月を見つめる。

「……ありがとう」

風音は、顔を赤くしたまま微笑んだ。
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