今夜もあなたと月、見ます。



「あ、月だ」

え?

謎のお礼に首を傾げていたら、響紀さんが前方を指差して言った

「あ、本当だ」

いつのまにか日は完全に落ちて、月が上がっていた

屋上にはほんのり明るいランプがあり、隣で月を見る響紀さんの顔ははっきり見える


屋上から見て、ちょうどまっすぐ前にある月

半分に届いているのかいないのか、もどかしいような形に見えるが、大体半円になっている

「半月ですかね」

「いや、あれは更待月だね」

ふけまち…づき?

「半月の手前の月だよ。欠けて行ってる最中かな」

へぇ…

「詳しいんですね」

「まあね」

ふふ、あいかわらず


「ロマンチストですね」
「ロマンチストですから」


綺麗に声が重なり、思わずお互いを見て笑う


あ、楽しいかもしれない

久々に感じたこのあったかい感覚

胸が少しジンジンする感覚


そして、それと並行して感じる

ちょっと苦しい、甘酸っぱい感覚


暖かさを感じるジンジンと同時に聞こえるのは

締め付けるようなドキドキという胸の音


< 100 / 177 >

この作品をシェア

pagetop