今夜もあなたと月、見ます。



ーーー


「…最近騒がしいな」

…は?

思わず口を開けてしまったのは

バイトから家に帰り、いつもは必要以上の会話しかしないはずの叔父がそんなことを呟いたからだ


「バイクの音」

え、あ

そういえばさっきから家の近くの道路を爆音でバイクが走り回っている

「そうだね」

「最近物騒な噂が多いからな」

暴走族のことかな


おじさんはダイニングのテーブルに足を組んで座っている

歳を感じさせない整った顔立ちが少し傾き、滅多に合わない目が合う

「バイト終わりもあまり遅くなりすぎないようにな」

「…うん」

思わずサッと目を逸らしダイニングを出る


情けない

身内と話すのにこんなにも緊張するとは

軽くため息をついて自分の部屋に向かった



暴走族

道組

最近どこにいてもこの名前を聞く

その道組のお頭と接点があると思うと、なんだか不思議な気分になる


道枝響紀

響紀さん


「会いたい…」


誰にも拾われることのない独り言は空を切って消えるだけ


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