契約結婚は月に愛を囁く
「ダビデさんはもう騎士に未練はないのでしょうか」

「そのようね。 今は御者の仕事が楽しいらしいわ。 彼女のお腹も順調だって」

「御祝いの準備はどうなさいますか?」

「そうねぇ……。 結婚の御祝いはいらないと断られてしまったから今度こそはちゃんと送りたいわ」

「では、銀食器になさっては?」

「そうね。 やはり、それがいいでしょうね」

 幸せな二人の未来図は、おそらく私には得られないだろう。

 羨ましくないと言えば嘘になる。
 妬ましくないと言えば嘘になる。
 平民であっても、貴族であっても幸せは欲しい。 なのに、私には手に入らない。
 それでも二人を祝いたい。

「私ね、ダビデが好きだったのよ」

 ジョージになら本音を打ち明けてもいいような気がした。
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