西岡三兄弟の異常な執着
真っ暗な東屋━━━━

朱雀と紫苑が、ソファに向かい合って座っている。

「別に、朱雀から花苗ちゃんを取ろうなんて思ってないんだよ?ただ、俺にだって会う権利はあるでしょ?
どっちかって言うと、花苗ちゃんを取ったのは朱雀なんだから。
だって……俺、花苗ちゃんの元彼だよ?
それに、花苗ちゃんの本当の好きな人は“この俺”なんだから!」
紫苑はあくまで冷静に、朱雀を真っ直ぐ見つめ言った。

「うるさい!うるさい!うるさい!
花苗は俺のモノなんだよ!!
勝手に会うな!!」
逆に朱雀は、かなり動揺し感情が不安定になっている。

「どうして……?」
「は?」
「そんなに花苗ちゃんを愛しているのに、花苗ちゃんの幸せを願わないの?
俺には、それがわからない。
…………てか!花苗ちゃんもだよ!
俺だって!朱雀に負けない位、花苗ちゃんが大好きなのに、俺と花苗ちゃんは好き合ってるのに……
花苗ちゃんは“これ以上、朱雀を壊したくない”って言って、朱雀と結婚した。
花苗ちゃんは、自分の気持ちを押し殺して朱雀の妻になった。
二人の気持ちがわからない!」

「息ができないんだ」
「は?」
「花苗が傍にいないと、もう俺は……息ができない。
花苗に触れてないと、身体が冷たくなって震えてくる。
花苗が傍にいない時は、仕事に没頭しないと吐き気がする。だから…仕事以外は花苗の傍にいないと、心も身体も安定しない。
花苗じゃないと、俺は俺でいられない……
俺から、俺を取っていくな!」

「朱雀…
………だから花苗ちゃんは、自分の気持ちを犠牲にして朱雀のモノになったのか……」

動揺して訴える朱雀に、紫苑は何も言えなくなり静かに呟いたのだった。
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