天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~

「なんとなくだが、和解もできた。聡悟の考えてることが少しわかって、安心したよ」
《そっか……。私もうれしい。ふたりが仲直りできて》
「でも」

 俺は白い息をほうっと吐きだす。絢美を想い、体の中で温められた息。

「絢美だけは渡せないって、言っておいた」
《勇悟……》

 絢美の照れた顔が目に浮かぶ。

 ……会いたい。大声で叫び出したいくらいに、そう思う。

「バレンタイン、またやり直ししなくちゃな」
《ふふっ。そうだね。平日の夜は会えないかな? 今日作ったお菓子、一週間くらいなら持つんだけど》
「ホントか? いい匂いだったもんな。どうにかして時間作るよ」
《うん。お菓子、ちゃんと取っておくね》

 会話が途切れ、沈黙が落ちる。妊娠中でつわりに苦しんでいる絢美の体を思えば、そろそろ電話を切って休ませてやらなくてはいけないのに、どうしても後ろ髪を引かれる。

「絢美」
《うん、なぁに?》
「好きだよ」

 自分の口から出た言葉が、声が、思った以上に甘ったるくて、照れくさかった。

 長年恋心を押さえつけていた分、愛情が暴走気味なのかもしれない。

《ありがとう。……私も》

 愛を告白し合った俺たちは、照れくささをごまかすように、クスクス笑い合う。

 ずいぶん遠回りをした気がするが、ようやくなんの障害もなく相思相愛になれた喜びを、しっとりと噛みしめた夜だった。

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