腹黒天才ドクターは私の身体を隅々まで知っている。

キス……?

見開かれた鷹峯(たかがみね)さんの瞳にまずいと思った瞬間、どんっ、と突き飛ばされて、私は思いっきり尻もちをついた。鷹峯さんが自身の口元を袖で押さえている。

「いったぁっ……!!」

いやゴメンだけども!! 何も突き飛ばさなくても良いのでは!?

「あ、す、すみません……ついっ……」

一瞬たじろいでいた鷹峯さんが、慌てて腕を引っ張って起こしてくれる。

その時、掴まれた手首がズキリと激しく痛んだ。

「っ……!?」

私の反応を見て、鷹峯さんが私の手首を見る。右の手首がみるみるうちに赤紫色に変色していく。

「ああ……()れてきていますね。ちょっと動かしますよ」

「痛っ!!」

手首が少しでも曲がろうものなら、鋭い痛みが走って思わず涙が出る。その間にも手首が二倍くらいに太くなってきて、鷹峯さんは急いで冷凍庫に保冷剤を取りに行ってくれた。

「折れてはいませんが、捻挫ですね。これで冷やしておいてください」

そう言って保冷剤を私に渡すと、鷹峯さんはすぐにどこかに外出してしまった。




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