逃げるなんて許さない
家に侵入し、彼女を抱き締めた時、これが夢じゃなくて現実なんだと思えた。もう紫帆は俺から永遠に離れない。そう思うと熱が込み上げてくる。

「さあ、一緒に来て」

手を捕まえて、車に乗せる。紫帆はまだ怯えた顔をしていた。そんなに怖がらなくても大丈夫だ。俺が一生大切にしてやるから。

「やっとお前と結ばれる。……幸せだ」

車が赤信号で止まった時、俺は堪え切れなくなって紫帆の顔を俺の方に向かせ、強引に唇を奪う。特別に想う人とのキスは温かくて、ずっと触れていたくなる。

「あなたと結婚なんてしたくない!」

そう言う紫帆の言葉をかき消すように、俺はひたすら紫帆の唇を奪い続けた。



それから、紫帆を強引に家に連れ込んだ。紫帆がいつでもこの家で生活できるよう、空き部屋を綺麗にして最低限の家具は揃えてある。そして、体を重ねた。

「……ッ!」

体を震わせる紫帆を抱き締めてベッドに横たわる。疲れ果てているというのに、紫帆とやっと会えた興奮からか、眠気は全くない。だから、指に紫帆の髪を絡ませて遊ぶ。
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