虹色のキャンバスに白い虹を描こう


はやる気持ちを抑えて、丁寧に封を切る。
真っ白な封筒に、中に入っていたのも真っ白な便箋。それからパンフレットが一枚と、写真が三枚。


「これって……私?」


同封されていた写真に写っていたのは、どれもこれも私だ。
髪がぼさぼさだから、風が強い時に撮られたものだろう。背景にも見覚えがあった。


『航先輩、あの! カメラ! 何で……』

『いいからそのまま漕いでて』


そうだ。あの時の写真だ。たまたま会ったおじさんのカメラを借りて、航先輩が急に私を撮りだした時の。
何回もシャッター音が聞こえて、どれだけ撮るつもりなんだろうと思ったのをよく覚えている。

一枚目。ブランコが高いところにあって、私がこっちを見ながら何か言っている。多分、「何撮ってるんですか」って言った気がする。
二枚目。ブランコがちょうど降りてきて、画面いっぱいに私が笑っている。こんなに近くで見られると恥ずかしい。
三枚目。ブランコの高さは分からない。私の横顔だけが写されていて、今にも泣きそうな顔をしていた。

被写体は自分なのに、背景も主役も変わらない三枚なのに、そこに物語がある。台詞が聞こえてきそうだ。

航先輩は構図のとり方が上手なのだと思う。だからあんなに人を惹きつける絵が描けるのだ。

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