クールなあなたの愛なんて信じない…愛のない結婚は遠慮します!


健吾が急いで帰宅すると、案の定、妻も母もご立腹だった。
急いで和室と玄関を掃除して、健吾を待ち構えていたのだ。

「死んだ父さんの仏壇に線香あげるだけじゃないか…。」

二人の冷たい視線に思わず健吾は項垂れるが、
母と妻の二人が、同時に顎をすくって指した方を見ると美晴がいた。

『あちゃ~。』

「今日は会社の遅番のお子さんと美晴ちゃんを預かる日って、私、言ったよね。」

キッと、佳苗が健吾を睨む。声の低いトーンは変わらないが、その目つきは恐ろしい。

「和室以外、家の中のどこにも航さんが来ないようにちゃんとしてよ。」
母も優しい物言いだが、目が笑っていない。
 「はい…。スミマセン…。」

美晴だけがニコニコと健吾を出迎えてくれた。

「伯父さん、お帰りなさ~い!」

「おお、帰ったぞ美晴!」
美晴の笑顔が天使の様に思えた。

「今日ねえ、算数の宿題があるの。後で教えてね。」

「りょうかい、お客さんがかえッ…。」
「お客様があるの?」

健吾の失言に、良子と佳苗の怒りはもはや頂点に達しようとしていた。

「大丈夫よ、美晴ちゃん。すぐにお帰りになる人だから。」
「そうそう、美晴ちゃんは拓ちゃんと遊んでいてね。」

「はーい。」

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