クールなあなたの愛なんて信じない…愛のない結婚は遠慮します!

 由梨はいきなり電話が切れたので、パニックになってしまった。
いったい何から手をつけて、どうすればいいのか…。
焦る気持ちのまま、思いつく限り闇雲に連絡しまくった。

夫は勿論、梓、美馬航の会社…。

夫には、『卓が家出した』と言ってしまうし、
梓には、『美晴ちゃんが父親に会いに行った。』と叫ぶし、
美馬航の会社に電話したら、しどろもどろになって不審者扱いされてしまった。


由梨から電話をもらった梓は、彼女の慌て方に驚いた。
『美晴ちゃんが父親に会いに行った。』と叫ばれても何が何だかわからない。

落ち着くようにゆっくり話しかけると、
どうやら美晴と卓が美馬航に会いに行ったらしいとわかった。

今朝、美晴は普通に学校へ行ったし、卓も駅まで送っている。
自分を騙して、どうやって二人が合流して新宿へ行ったのか…。
方法も理由もわからないが、子供二人だけで行動しているのなら美晴と卓が心配だ。

梓は、まず深呼吸してから専門家でもある兄に連絡した。

「兄さん、今朝の話を美晴が聞いたのかもしれない。」
『どういう事だ?』

「由梨がたった今、連絡くれたの。美晴が父親に会いに行ったって。」
『何だって?美馬の会社にか?』

「子供二人で行きつける訳が無いわ。会社の場所も知らない筈だし。」
『お前、美晴の携帯にはGPSつけてるだろ。居場所を特定しろ!』

「それが、新宿駅の地下街をウロウロしているらしくて特定できないのよ!」

『俺が新宿へ行く!お前は場所を確認して連絡くれ。』

「お願いよ、兄さん。お願い…。」

梓の涙声が健吾の胸に刺さった。

『兄ちゃんに任せとけ!』


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