図書館司書に溺愛を捧ぐ
「あ、そろそろだ」

基紀さんは立ち上がり玄関の方へ歩いて行った。
ガサガサと音がしていたが何か大きなものを持って出てきた。

「紗夜、誕生日おめでとう」

あ…誕生日。

薔薇の花束を抱えて部屋に戻ってきた基紀さんに驚かされた。

「本当は本数にも意味を持たせたかったけど現実108本もらったら困るかなと思ってさ。だからこれは気持ちだけ。本命はこっち」

そう言うとケースからネックレスを取り出してきた。

「誕生石のサファイアだ。意味知ってる?」

私は顔を横に振った。

「サファイアを持っていると自信がつき、成功を収めることができるといわれてるらしい。それに心配事を吹き飛ばし、人を愛し、真実を探求するとも言われていて、紗夜にピッタリだと思ったんだ」

「知らなかった。でも透き通るような青に吸い込まれそう。とても綺麗」

「少し小ぶりだからいつでもつけていてもらえたら、と思って」

「大切にします。ありがとうございます」

「紗夜、30歳おめでとう。一緒にこの時間(とき)を過ごせて嬉しいよ。これからも毎年お祝いさせて欲しい」

私は頷いた。
30歳というと基紀さんと出会って19年。
あんな子供だった私たちがこうして過ごしていることは奇跡としか思えない。

この奇跡を誰に感謝したらいいのか分からない。
でも再会を奇跡で終わらせず、私を見つめ続けてくれていた基紀さんがいてこの奇跡が現実のものになった。

私たちの縁という名の糸を手繰り寄せ合えたことを心から大切にしたいと思った。




END
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