苺にはもうなれない

「深雪ちゃん、今日さー」
薫おじさんがポットに熱いコーヒーを入れて、軽食のサンドイッチを紙袋に入れた。

「これ、届けてくれない?2丁目の花屋のおばあちゃん家に。電話がかかってきたんだよねー、ぎっくり腰になったんだって」


「えっ!?」



「あのおばあちゃん、息子さん夫婦とは別々に暮らしてて今はひとり暮らしだからさー、ちょっと心配だし。コーヒーが飲みたいから、出前してくれって言ってるんだけど、様子見がてら行ってきてくれる?」


「あっ、はい!今から行ってきます」


私はすぐに出前の荷物を受け取って、お店を出た。




2丁目の花屋のおばあちゃん家には、何度かおつかいでも行ったことがある。

お店に飾るお花を買ったついでに、おばあちゃんと少しおしゃべりしていた。


大丈夫かな、おばあちゃん。




「あれ、深雪ちゃん?どこ行くの?」


背後から声をかけられて振り向くと、「黒猫」で働いている幸絵さんだった。




「あっ、おつかい……というか、出前?です。花屋のおばあちゃんのところ!」


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