苺にはもうなれない
そう言ってもらえただけで、心の中が軽くなってくるから不思議だ。



「元気、出てきました。武岡さんのおかげです」

私は感謝をこめて伝える。


武岡さんはその時きょとんとした顔をしたけれど、すぐに笑顔になった。

「小森さんの今日が、良い1日になりますように」

そう言ってくれた武岡さんを、私はいいな、と思った。




いいな、この人。

好きだなぁ。






心の中で。

自然と思った。






ずっと知りたいと思っていた。

ずっと話していたくなると思っていた。



武岡さんのこと。








あぁ、そうか。

恋をしていたからなんだ。






そう思うと、私の顔はまた赤く染まっていく。

「小森さん?」
武岡さんの不思議そうな声が耳に届く。

だけど、どんな表情をしているのかは、私には分からない。





俯いて、両手で恋する顔を隠していたから。








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