苺にはもうなれない
鈴井くんは何故か、得意気な顔になって話し始めた。
「あの子、はじめはもっとオシャレで可愛い子だと思ったんだよ。オレさー、騙された感じがするんだよね。どんどん地味な子だって分かってきてさー、内気なのかもしれないけど、退屈?」
「……『退屈』」
「そ。退屈。オレとは合わないって分かったんだよ。やっぱり透子だよなー!」
そう言って私に一歩近づき、顔を寄せてきた鈴井くんを、
「やめてっ!」
と、私は突き飛ばしてしまった。
「はぁっ!?」
私は心底後悔した。
近所迷惑でもいいから、部屋に入れるんじゃなかった。
ううん、そもそもドアを開けるんじゃなかった。
……違う。
付き合ったりなんかしなければ良かったのかもしれない。
「透子、自分が何やってるか、分かってるの?」
バランスを崩して、散乱したままの洋服の山に倒れた鈴井くんは、今まで見たことのない醜い顔で私を睨みつけている。