苺にはもうなれない
……嘘だけど。


『あ、分かった。ごめんね、おやすみ』

弘正さんはそう言って、電話を切った。




ごめんね、弘正さん。











ベッドに入って。


私はうるさい心臓を落ち着かせるために、深呼吸を試みた。




激しい動悸が少しずつ穏やかになっていくことを感じながら、深く息を吸ったり吐いたりを繰り返す。




プロポーズの返事は決まっている。


もちろん、最初から。





だけど、決めてしまえば約束を守らなくてはいけなくて。




その約束が私の浮かれた心の中に、ずっしりとした石に変わって鎮座している。





清香ちゃん。



清香ちゃんのことを考える。




清香ちゃんが亡くなってからしばらく。

私は清香ちゃんのことが頭から離れなかった。



きっと、ずっとそうだろうと思っていた。




だけど。



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