目覚めたら初恋の人の妻だった。
絶望の淵

目覚めたら

柚菜(ゆな) スキだよ・・・」
誰かが私を優しく抱きしめながら囁いてくれる・・・
幸せ過ぎて良いのかな?
そんな温かい気持ちが急ブレーキの音と背中に
いきなり受けた衝撃で
痛みに変わる・・・
「痛い、痛い・・・助けて〇〇〇・・・」
私は誰を呼んでいるのだろう・・呼んでいる
その男性はボヤっとして
手を差し伸べるが掴もうと思った瞬間に
消えてしまう・・

「柚菜 、柚菜・・・」
誰かが自分を呼んでいるそっちへ向かおうとすると、
又 懐かしい声が
呼んでいるような気がする・・
低くて温かい声が・・・
「ゆな   」
その声が聞こえたら最初に呼ばれた方の道が
消えてしまった。

次の瞬間に全身に痛みが走った
「痛い!痛い!痛い!」
そう声に出しているのに自分にその声は届かない。
口が何かで塞がれていた。

どうして?どうして?
その答えを知りたくて何度も何度も開けようと
思っても開かなかった
重たい瞼を必死に開ける。
そこにボンヤリと見えるのは白い天井。
ピピピと鳴る機械音。やたらと眩しい蛍光灯。
こんな天井知らない・・・・
目を動かすと視界に入る緑色のプラスチック・・・
それが酸素吸入器だと気がつくのに暫く
時間が掛かった。

「「「柚菜」」」
3つの音が自分を呼ぶが解らない・・・
瞼が重くなって又 夢の中に引き込まれていく。
もう、閉じかけようとした時に響いた
「柚菜」の声がやけに心地よかった。

次に目覚めた時は母が傍に居た。
何日ぶりに目覚めたのか定かでは無いが、
母はゲッソリとやつれて、
自分の記憶にある母の面影よりも年老いて
見えたのは気のせいだろうか?

「お母さん?」
その声が前回と違い届いたらしく、母は涙を
溜めフルフルと震え
「柚菜、大丈夫? 今 先生呼ぶからね。」
そう言いながらナースコールを慌てて押す。

身体も痛いが手首が嫌にもどかしいい・・
そこは包帯がグルグル巻きにされ、
点滴の針が刺さっていた。
胸も、もどかしかったがそれは、
のちにドレーンが胸腔に入っていたからだと
解ったけれど何とも言えない痛み次から次へと
襲ってくる
自分の身体じゃ無いみたい・・・
何があったのだろう?
全然思い出せない・・
どうして私はこんな事に・・・
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