STRAY CAT Ⅱ
「っ、ごめん」
どうしようもなく、恭のことだけ好きだ。
だからこそこんなにも不安になるし、こんなにも涙が出てくる。駆けつけてくれた暖くんには本当に申し訳ないけれど、この気持ちが変わることはない。
「謝んなくていいよ~。……知ってるから」
「、」
「そういう健気なとこまで、馬鹿みたいにかわいいって思ってるだけ。
泣かせたあいつに腹立った時点で、気持ちなんて決まってんだろうな~」
優しく包むような抱きしめ方も、恭とは違う。
すこし力任せで、でも強引にはしない恭が好きで。不器用、なんだと思う、彼は。その不器用さも含めて好きだと思うのに、もっと、って欲張りになる気持ちもある。
もっとわたしだけでいっぱいになってくれたらいいのに。
溺れて落ちて、他に何も見えないくらい。
「たぶん、思ってるよりも、好きだよ。
……奪ってでも幸せにしたいなって、気が変わった」
ここで自覚するなんて、と困ったような笑みを浮かべる暖くん。
優しい人だと思うし友達としてはとても好きだけど、それでも恭に対する気持ちとは全然違う。
「ありがとう、暖くん……」
「どういたしまして。優しいねえ、鞠ちゃんは」
泣き止むまで。そう言って頭を撫でてくれる彼の腕の中で、すこし泣いたあと。
不意に耳に届いたバイクの音に、身体がぴくりと震える。こんな朝早く、住宅街でバイクを走らせてる人なんて、そういない。
「っ、」
それが確信に変わったのは、この家の目の前でバイクが停まったから。
玄関の扉を開けようと手を伸ばしたら、暖くんにその手を制すように掴まれた。そして。