俺の子を産めばいい~エリート外科医の愛を孕む極上初夜~

「あなたのような先生が担当なら、きっと患者さんも安心するはずです。頑張ってくださいね」


 帰りがけにかけられた言葉はささやかな自信になり、今でも胸に残っている。夕日の中、舞い降りてきた女神のような彼女の姿と共に。


 この出来事がきっかけで、俺はさらに末永さんを意識するようになっていた。

 オペの復習をしているときは集中しているが、ひと通り終わって気が抜けると、司書の女性陣が話している内容が聞こえてきて、つい耳を澄ませてしまう。


「末永さん、プリンが好きなんですか」
「うん。昔ながらのしっかり卵を感じる固めのやつから、もはやプリンじゃなくない?ってくらいクリームたっぷりのやつまで、どれも好きよ」


 そうか、好物はプリンなのか。知らなかった情報がひとつ増えて、些細な優越を覚える。


「〝ル・リアン〟のプリンは安くてすっごく美味しいから、東京に行くときは寄ることが多いかな。〝パティスリー・カツラギ〟のシルクプディングも食べてみたいんだけど、いつも完売しちゃってるのよね」


 続けて洋菓子店の名前が飛び出し、俺は咄嗟にノートにペンを走らせていた。

 甘いものは嫌いじゃないが、スイーツの店に自分で行くことはほとんどないため、メモしておかないと忘れてしまう。
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