日陰のベンチで、あなたに会いたい

この後も“友達が欲しい女子“は、どうして自分には友達ができないのか、
そして、どうしたら友達ができるのかを一人で話しながら、
おそらく弁当を食べ終え「友達が欲しい……!」という切実な思いのこもった言葉を残して去っていった。

“友達が欲しい女子”がいた時間は20分くらいだったが、終始笑うのをこらえていて、僕の腹は限界突破をしていた。

その子が立ち去るときに、痛い腹を必死に抑えながら、去っていく後ろ姿を見た。

肩よりも少し長い黒髪で、きれいなストレート。

言っていた言葉には自信のなさを感じたが、歩く姿は背筋がピンとしていて、
先ほどまで「友達が欲しい」と言っていた人物とは思えないほどの気品を感じた。

後ろ姿からは学年などは分からないが、
「高校に入ったら友達頑張って作ろうって思っていたのに……!」
と言っていたことから、新入生だろう。

今まで、僕の周りには自分を取り繕って、僕に気に入られようと寄ってくる女子ばかりだったから、「友達が欲しい」と切実に思うあの子は、まぶしいくらいだった。

あの子は明日もここに来るのだろうか。

先ほどまで、自分の気に入っている場所を壊されると悪態ついていたにもかかわらず、明日も来てほしいと願っている自分に驚いた。

そして、特定の人と会うのを楽しみにするという感情も初めてだった。

明日も、今日のようにいい天気だといいな。

そうすれば、あの子も来てくれるかもしれない。

ほのかな期待とともに、午後の授業を受けるべく教室に向かった。
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