若旦那の恋は千鳥足
「もしかして、大家族とか?」

「い、いえ、違います。
一人暮らしなんですけど、りょ、料理が好きなんです。」

イケメンの手前、私はちょっとだけ嘘を吐いた。
料理は確かに嫌いじゃないけど、本当に好きなのは、料理じゃなくて食べること。
食べるために料理をやるだけ。



「へぇ、一人暮らしなんだ。
出身は東京?」

意外とおしゃべり好きなイケメンさんだ。
おかげで、緊張もわりとほぐれてきたよ。



「はい。東京です。」

「御家族は?」

「近くに住んでます。」

「そう…御家族も東京なんだね。
ねぇ、突然、こんなことを言ったらびっくりするかもしれないけど…僕と結婚しない?」



(え??)



今、この人、変なこと言った…よね?
結婚しない?とか、なんとか。



いやいや、そんなこと、あるわけない。
だって、私達は出会ってまだ数分で、お互いの名前すら知らないんだから。
やだなぁ。こんな素敵な人と相席なんて初めてだから、私、どうかしてるんだね。



「す、すみません。
今、なんておっしゃったんですか?
私、ちょっとぼーっとしてて…」

「だから……
結婚しないかって言ったんだけど。」

「え、ええっ…!?」
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