天空の姫Ⅰ ~二人の皇子に愛された娘~


「そなたは願いを叶えられると聞いた。本当か」

「ええ、本当よ。死んだ者を蘇生させたり天女を下ろすことはできないけれどね…あなたも願いを叶えたいの?」


羅刹は嬉しそうに笑った。


「そうだ」

「先に行っておくわ。私は寂しがり屋だから契約を結ぶ時に相手に対価をいただくの…いい?」

「構わぬ。何が望みだ」

「先にあなたの望みを聞かせて頂戴?」

「愛する者が、魔気病で残り僅かの命だ。治す薬が欲しい。できるか?」

「お安い御用よ」


そして羅刹は大きい体を揺らせ喜ぶ。


「あなたは魔界の皇太子で戦神でしょ」

「わかるのか」

「ええ。この森を燃やせるのは魔帝とあなたくらいよ…私も神籍が欲しいけど、この成りだから神と認められないの。でも力は神と同等だわ。だから私は呪神羅刹と呼ばれているの」

「その姿は?」


聞くとまた羅刹は嬉しそうに笑った。


「私は呪いから生まれたの。だから人型も取れない醜いままなのよ。この頭も鼻も口も契約者からの対価で頂いたのよ」


にぃっと羅刹は笑い、朱雀が不気味さから羽を震わせた。


「そういえば二千年前にも魔気病を治せと言ってきた者がいたわ」

「その時の対価は何だったのだ?」

「地位よ。私にとっても治したい人が特別な人だったからおまけしてあげたのに。その男は断ったわ。地位は手放せないと言って私の元を去った」

「ではその病の人は?」

「…死んだわ。私も悲しかった」

「そうか…」


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