社長、それは忘れて下さい!?

 龍悟や旭は思考や感情と身体の動作を分離できるタイプのようだが、涼花はそうはいかないので考え事をするとすぐに動きが鈍り、結果体調不良を疑われてしまう。涼花は直前までしていた話題の内容を引っ張り戻すと、少し気まずい心地を隠すように呟いた。

「……行きましたよ」
「へえ。……どうだった?」
「……どう、と言われましても」

 掘り下げてくる龍悟に、涼花はまた何と答えればいいのか迷ってしまう。

 合コンと言っても、エリカの知人から紹介されたという商社勤めの男性二人とエリカの四人で食事をしただけだ。場所はグラン・ルーナ社の最寄りから二つ先の駅近くにあるダイニングレストランで、残念ながらグラン・ルーナ社の経営店ではない。内容が聞きたいというのなら、これまた残念ながら、上の空だったのであまり覚えていない。

「特に何もありませんでしたよ。お食事して終わっただけです」
「……は? それだけか?」
「それだけですよ」

 申し訳ありません、と付け足した方が良いのかも、迷うところだ。

 龍悟の望みには一歩も進展していないのだから謝罪の一つでも添えた方がいいのかもしれない。けれど涼花に恋人を作れと促したはずの龍悟は、胸を撫で下ろしたように

「なんだ……そうか」

 と息を吐いた。
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