金曜日はキライ。



°


日葵は千昂くんと帰る時、必ず教室で迎えに来るのを待つ。といっても毎日授業が終わる時間は同じだから千昂くんが日葵を待たせることはほとんどなくて、まだ教室にいろんな人が残っている中ふたりは仲良く並んで帰っていく。

「仲良しだねえ」
「お似合いカップル」
「憧れるふたり」

そう言われることもあって、そのたび日葵は女の子らしくうれしそうに笑って「千昂のおかげ」とささやくように言う。

ずっとそのまま親友の幸せそうな顔を見ていたい気持ちと、本当にいいのかなって思う気持ちと、見たくない…見せたくない気持ちが重なって、ごちゃまぜになって、心のなかは晴れ空には程遠い。



スポーツ大会当日は、夏の暑さを凝縮したような日照りで朝からくらくらしていた。


「ちょっと茉幌、本当に大丈夫?」


日葵が心配そうな顔をして覗き込んでくる。

熱中症になりやすいこの体ことを日葵はよく知っている。

それにしても…夏は好きだけどこんなに暑くなっちゃうなんて…。


「うーん…」


大丈夫って言いたいけどなかなか言葉にできない。誤魔化しでもいいから言いたいのに、頭が痛すぎて。

日葵に日焼け止めクリームを塗ってもらいながら、朝登校した時に外に出ただけなのに教室ですでにへばってしまいそうな自分が情けなくなった。

これはまずい。でも試合は午前中に2回あって、ベンチが陰ってるからきっといけるはず。


「平気、がんばる。水と塩分飴たくさん持ってきたから」

「なんかあったらちゃんと言うんだよ。倒れるほうが迷惑かかっちゃうからね」

「うん、ありがとう」


子供に言い聞かせるような言い方に思わず笑ってしまった。わざと「迷惑」って言葉を言ってくるあたり、日葵はわたしの性格をよく解ってくれているなあ。

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