金曜日はキライ。


きっとがんばれって言ってくれる。「わたしのぶんまでさ!」なんて笑ってくれる。日葵がどういう子なのか、わたしが一番知ってる。

どうして勇気が出ないんだろう。


手をつなごうとしたのか、伸びてきていた手が止まった。


「あれ?ブレスレットは?」


腕を掴まれた。ついこの前までそこにあった、ふだんは黒に近いけど光が当たると虹色が浮かんでくる、常盤くんの誕生日石。


「あ…あの、常盤くんの誕生日プレゼントにした」


誤魔化してもバレてしまいそうだから素直に話すと日葵の目がまんまるになった。


バレてしまうだろうか、わたしの気持ち。

うまく誤魔化す方法を考えておけばよかった。そんな後悔が頭をよぎる。



「え!清雨って最近誕生日だったの?」



だけど日葵のすっとんきょうな声は予想とは別の反応をした。

心臓が、ふるえる。


「夏休み中に…」

「そうなんだ?いやあ知らなかったなー」


言ってくれたらいいのにねえ、なんて膨れてる。自分の誕生日をいちいち言う人はあまりいないと思うけど…。


「…日葵も常盤くんのことで知らないことあるんだね」

「好きだった時は覚えてたかもしれないけどもうわすれちゃってるよ。ほら、もともとそういうの苦手で茉幌のしか覚えてないくらいだし。千昂のだってあやういよー」


去年も今年もアルバム作りをしてたくらいなのにそんな冗談を言う。

わたしはそれに笑いながら、なんだか泣きそうだった。


日葵が知らないことをわたしは知っていた。

それをうれしいと思ってしまう自分がいやだった。


日葵はもう前に進んでる。

それなのに自分の気持ちをちっとも言えずにいる自分は、もっともっと、いやだ。


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