スパダリ外交官からの攫われ婚


(こと)ちゃんの方から電話してもらえるなんて嬉しいわ! 志翔(ゆきと)がヤキモチ妬くかもと思って、私からは連絡出来なかったの』
「もう、奈緒(なお)さん! そんな事で志翔さんが妬いたりするはずないじゃないですか、そういうのはいつも私ばっかりで」

 リビングに戻った琴がスマホを操作して電話をかけた相手は、加瀬(かせ)の古くからの知人である奈緒だった。彼女とは一度会った時に連絡先を渡されており、今の琴が安心して話せる相手でもあった。

『ちょうど良かったわ、アダンも仕事で遅いって連絡があったしゆっくり話しましょう? 特に二人の蜜な新婚生活についてなんかも、ね』
「な、奈緒さん‼ 奈緒さんまで私を揶揄うのなら、怒りますよ」

 アダンとは奈緒の夫で、カリスマメイクアップアーティストの妻を支えながら店を経営していると聞いている。彼は奈緒をとても愛していて、惚気も凄いのだそうだ。
 しかし蜜な新婚生活と揶揄われてしまうと、タイミング的なものもあり琴の顔が茹でだこのように赤くなってしまった。

『あら、違うの? アダンが今日は志翔から惚気のメッセージばかりが送られてきて大変だって言ってたけど』
「~~~~っ‼」
 
 どうやら加瀬は琴に隠れて、まわりの人たちに随分と惚気話をしていたようで。特に想いが通じ合ったこともあり、今日は送られてくるメッセージの量が半端なかったらしい。
 それを聞いてますます琴の顔が熱くなってしまう。琴の前では涼しい顔をしているくせに、なんて事をしてるのかと思わずにはいられない。


< 189 / 237 >

この作品をシェア

pagetop