スパダリ外交官からの攫われ婚
「なぜ空港に向かっているんですか? 私と加瀬さんが」
加瀬一人で空港に向かっているのならば理解出来なくもない、それなのになぜ自分も一緒にそのタクシーに乗っているのか。
もしかして加瀬は琴に見送りでもしろと言っているのかと思ったが、ただの仲居である琴にそんなことを頼むのも変だ。
そう言えば自分はどうしてさっきまで寝ていたのだろう? そう思った琴がさっきまでの出来事を思い出そうとしていると、加瀬は当然のようにを引き寄せて……
「さっきの話を聞いてなかったのか? あんたは俺とパリに行くと言っただろう」
「……パ、リ?」
一瞬パリとは何だっただろう? そういえば最近近所に出来た洋菓子店がそんな名前だった気がする、なんて琴はどこか他人事のように聞いてしまった。
今まで高校の修学旅行以外、そう海外に出る機会もなかった琴には現実味がない。
「そうだ。俺はパリで仕事をしているからな、あんたにもソコについて来てもらう」
「私が加瀬さんにですか? ええと、それはいったい何故?」