スパダリ外交官からの攫われ婚


「い、いえ……そんなつもりはないですけど」

 さすがにそんな事をするつもりはないが、何故それを加瀬(かせ)が許さないのか。そこは(こと)には全く分からない。
 しかしそれを聞けるような雰囲気でもなく、琴は素直に加瀬の言う事を聞いて下着のサイズを教えるはめになってしまった。

「いいか、絶対外に出るなよ? インターフォンが鳴ろうが無視しておけ」

 そう言うと加瀬はさっさと玄関から外に出て、外から施錠して行ってしまう。
 一緒に外に出て買い物が出来なかった事にガッカリしながらも、琴はキッチンやリビングと家の中を見て回った。

「やっぱり素敵なお家、志翔(ゆきと)さんって意外とオシャレ……」

 イメージでは黒ばかりでインテリアを揃えてそうな男なのに、以外にも白を基調とした部屋の作りだった。
 広いキッチンも背の低い琴でも問題なく使える高さで、棚の中の調理器具なども充実していた。

 一通り見終わるとまた暇になる。海外のテレビ番組など琴にはよく分からないし、付けては消してソファーに丸まった。

「早く帰ってこないかな、志翔さん……」

 急にこの場所に一人残された心細さに襲われて、そう呟いて琴はゆっくり瞳を閉じた。


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