スパダリ外交官からの攫われ婚
どれだけ悩んでいても、いくら高価だったとしてもこの服を着るしかない。そう思って袖を通して着たワンピースは思っていたよりもずっと琴に似合っていた。
オシャレをすれば継母や姉たちから嫌味な言葉を言われ、ずっと地味で動きやすさ重視のものばかり着ていたのだが……
「サイズもピッタリだし、すごく可愛いくて私じゃないみたい」
オシャレな服を着ただけでも随分と自分が違って見える、そのお蔭がなんだか自信も湧いてくる気がした。
琴は洗濯機から先ほどまで洗っていた服を取り出し、加瀬から借りていた服を入れると脱衣所から出た。加瀬に今の自分を見て欲しい、そんな気持ちで。
「良く似合ってるな。どうだ、俺の見立てに間違いはなかっただろう?」
加瀬は琴が欲しかった言葉をすぐにくれる。こういう時の彼は意地悪ではないようで、優しくその手で琴の頭を撫でてくれた。
「ええ、下着まで完璧で文句のつけようも無かったです」
「俺がいやらしいみたいな言い方をするな、サイズはあんたが教えたんだろうが」
結構無理矢理聞き出された気もするが、琴はそこまでは突っ込まないでおいた。今のいい気分をわざわざ壊す必要はないと思ったから。