フォンダンショコラな恋人
「なるほど。次回法廷で判決を言い渡します」
たった2回の裁判で、判決が降りるなど明白だ。

──勝った。
傍聴席に後でそっと入ってきた渡真利も薄らと笑っている。

数日後、相手方弁護士の真田が渡真利のところにやってきた。
別件で打ち合わせと言っているが、先日の話をしたいのもあるのだろうと思う。

「いやー、真田くん、実にやる気のない感じだったね」
「そんなことはないですよ。僕は常に依頼人のことを考えていますから」
にっこり笑う笑顔が実に胡散臭い。

「依頼人のことを考えてアレか?」
「ええ。どう考えても最初から無理な話で。止めたんですよ僕は。それが弁護士として正しいでしょう? なのに、どうしても、というからその意向に沿っただけです。着手金も相談料もいただいていますしね。もちろん報酬も発生しますし」

「お前、あの案件、片手間のバイト、位に思っているだろう?」
渡真利の呆れた声だ。

「だから何なんです?止めましたよ。僕は。法律家のプロである僕の意見を聞かずに自分の意見を押し通したんです。それはもう、後悔はないでしょう。それに長引かせても、僕の報酬が増えるだけで、本人には何のメリットもない。ならば、あの裁判官の早めの判決は逆に温情だと思いますがね」
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