フォンダンショコラな恋人
「嬉しいな」
「嬉しい?」
「羨ましかったんだ。誰だっけ、蓮根先生?」
「ああ、結衣ちゃんの彼氏さん」

「すごく堂々と彼女は自分のものだって主張していて、彼女もあの人のために浴衣着たんだろうなってよく分かったから」

少しだけ、拗ねたような顔をして、倉橋はそう言った。

「翠咲が僕のために浴衣、着てくれたらいいのにってすごく心の中で思ってたよ」
心の中で、というのがまた倉橋らしい。

けれど、そんな風に思っていたなんて。

「そうしたら、あの北条? とかいうのが、君とイチャイチャし始めるから」
「イチャイチャとかしてないんで」

「してただろう。だから……まあ、妬けてしまったというか」
そう言って、倉橋は少しだけ顔を横に背けた。

その耳が赤い。
翠咲は笑ってその耳をつん、と指先で触る。

「なんだ?」
「赤いですよ」
「僕をからかうの?いい度胸だな」

倉橋が緩く翠咲のその手を握る。
そうしてその腕を引いて、翠咲をさらにきゅっと抱き寄せたのだった。


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