フォンダンショコラな恋人
翠咲達は対策室の指示に合わせてサポートをすることになる。
翠咲は入社してからずっと、この保険会社では査定と呼ばれる支払を担当する課に所属している。

そうして、いつも思うのだ。
お客様の役に立つことは、もちろんうれしいけれど本来なら何もないことが一番いいんだ、と。

翠咲達が役に立つようなことが起こらないことが本当は一番いい。

それでもそんなことが発生してしまったのならば、あとは一刻も早く対応をする。

通常業務をこなしながら、翠咲は会社を上げて対応しなくてはいけないような事態にならないといいと強く思った。

しかしそんな祈りも虚しく台風は太平洋側の人の多い場所を、日本海側に抜けるような進路であることが予想されていた。

対策室での何度目かの打ち合わせを終えて課長が戻ってくる。
翠咲の他、課長補佐、係長クラスが呼び出されミーティングを行った。

台風が通過したのちに被害がはっきりしたら、一気に電話が鳴ることになる。
3ヶ所あるコールセンターで対応しきれないケースに備えて、そんな場合は電話を本社に繋ぐ決定がされたそうだ。

係長クラスまではその電話の対応をすること、受付ファイルの一斉作成の手順や支払入力の際に人手が足りなかった時の人の手配など、対応を次々打ち合わせていく。
< 158 / 231 >

この作品をシェア

pagetop