フォンダンショコラな恋人
「なんだか、先生みたいですね」
「人をお菓子みたいに……」

「違います。フォンダンショコラ、ですよ」

そう、倉橋は外は苦いけれど、中は温かい人だ。
そして、冷たいのが合う。
そんなところまで似ている。

「フォンダンショコラ、な……」
アイスの添えられたそれは、冷たくて温かくて、苦くて……甘い。

「君はこれが好きなんだ?」
「え? フォンダンショコラですよ! 好きなのは!」

「ふぅん?」
「ちょ…なんですか⁉︎ そのドヤ顔! やめてもらっていいです?」

「そんな顔はしていない」
「や、してますからっ!」
「そんなの分かるのは君くらいだよ」

くすくすと倉橋が楽しげに笑うので、しかもその顔はひどく魅力的だったりしたので、それ以上は翠咲は何も言えなくなってしまったのだった。

好きなのは、フォンダンショコラだもん。
別にフォンダンショコラみたいな先生が好きとは、一言も言ってないから!


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