フォンダンショコラな恋人
「ご案内します。案件はお分かりですか?」
「ああ、資料室の鍵も預かっている」
「じゃあ一緒に行きます。きれいに整理はされているけれど、探しにくいかもしれないので」
「助かるよ」

翠咲は資料室を案内し、倉橋が持っていたカードキーでドアを開けた。

「倉橋先生、案件の番号は分かります?」
「ああ。これだな」

倉橋は胸ポケットから携帯を取り出して、メモ機能を呼び出している。

翠咲はその画面をひょいっと覗き込んだ。
「ん? 2年くらい前ですね。えーと、あっちの棚かな」

一瞬、倉橋との距離がとても近くなって、柑橘系の爽やかな香りが鼻をくすぐる。
何かつけているのかな……さすがイケメン弁護士、いい匂いがする。

翠咲は資料室の奥へと入っていった。
「資料は年ごとで分かれてるんです。案件番号順になっているから……んーこの番号は」

二人は目の前にそびえるような資料の棚を見上げた。
「あの辺……か」
「ですね。確か、脚立が」

翠咲が資料室の中を見回すと、棚の角に可動式の脚立がある。

「あ! あれです」
それをコロコロと引っ張ってきて、めぼしい場所に置いた。
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