フォンダンショコラな恋人
どこか妖艶な声音で倉橋はそう言って、逃げることなんて許さないというように、翠咲を強く抱き寄せてその長い指で頬を撫でた。

「で、反則なのって、どんな顔だって?」
「……っ……」
囁くような、それてでいて熱さのこもった声で吐息まじりに耳元で聞かれる。

目を開けていられなくて、思わず翠咲は目を閉じる。
「あ……やっ……」

思わず漏れてしまった声を封じるように、唇が重なり舌が甘く絡まって、指先が耳の形をゆっくりと辿った。

「で……? 逃げない理由は?」
倉橋の追求は止まらない。

理由?
理由、理由なんて……
翠咲は思わず叫んだ。

「……っ、黙秘しますっ……‼︎」
「ふっ……あはは……!」

こんな風に声を上げて笑う倉橋を翠咲は初めて見た。

なんなのもう。
笑い顔、めっちゃ可愛いし。

「黙秘……ね。僕に挑むなんていい度胸だな。本当に、本当に僕は君がすごく気に入っているんだ。僕が本気になることは本当に珍しいんだけど、僕は本気だよ」

いつもは冷静なその表情が、興奮でキラキラしていて、とっても綺麗……なのだけれど、なのだけれど!
気に入っている、とか本気だとか今までそんな雰囲気、かけらも見えなかったような気がするのに。

それに、なんだかスイッチ入った倉橋先生……って、想像するだけで怖いんですが!!


< 87 / 231 >

この作品をシェア

pagetop