辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する

「サリーシャ、手を」

 セシリオが近づいてきたサリーシャに空いている手を差し出す。けれど、サリーシャは無言でその手を見つめて、小さく首を横に振った。

「三人横に並ぶと道の邪魔になってしまいますわ」
「きみを一人には出来ない。それに、昨日の雨で足元が悪い」

 セシリオが顔をしかめる。 

「でも、マリアンネ様を一人にするわけにも参りません」

 サリーシャは困ったように首をかしげる。

 さっきからずっとこの繰り返しだ。
 小さな声で今日何度目かのお決まりの台詞を告げると、セシリオはぐっと眉を寄せて最終的には有無を言わせずサリーシャの手を握った。
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