辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する

 頭上から聞こえる言葉を聞き、サリーシャはコクンと息を飲んだ。それはまさに、昨晩マリアンネがサリーシャに言ったことだ。

「……もしや、ダカール国と戦争になるのですか?」

 そう尋ねる自分の声が少し震えていることに気付いたが、この震えを止められそうになかった。

「大丈夫。心配いらない」
「でも……」

 万が一戦争になれば、戦場はここアハマスになり、セシリオは総指揮官として戦場に出る必要がある。セシリオの父親である先代のアハマス辺境伯はそれで亡くなったのだ。否が応でも嫌な想像が頭に浮かんだ。

「大丈夫だ。戦争にはならない。安心しろ」

 後ろにいるセシリオは、不安で押し潰されそうになるサリーシャを安心させるように、手綱を握ったままお腹に手を回してぎゅっと抱きしめた。そうされると、なぜだか本当に大丈夫な気がしてきて、とても安心した。それと同時に、とても申し訳ない気持ちにもなった。
< 166 / 354 >

この作品をシェア

pagetop