辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
 サリーシャは思った。
 やっぱり、今日はなにかがおかしい。
 自分でもよくわからない。
 自分はこれから、どうすればいいのだろうか。
 幸せな行く末が全く見えない、終わりのない迷路に放り込まれたようだ。

 泣きそうな顔をする友人と、その愛する人──エレナをサリーシャは見上げた。

 フィリップ殿下とエレナ様が微笑み合う姿を見て、本当は羨ましかった。

 ──化かし合いはもうたくさんだわ。

 自分にも、あんなふうに微笑んでくれる人がいたら……
 厚かましくもそんなことを思った。
 自分でも思う。どうかしていると。
 そんな未来、あるわけがないのに。

 ──だからわたくし、こんなことになっても、ちっとも後悔はないのよ。
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