辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
「まいったな」

 ため息混じりの声が頭上から降ってくる。呆れられてしまっただろうか。サリーシャは恐る恐るセシリオを見た。ちらりと指の隙間から見ただけなのに、しっかりとヘーゼル色の瞳と視線が絡み合い、サリーシャの胸はトクンと鳴る。

「こんなにも愛らしいきみを置いて国境に行くなど、まるで拷問だな。もうすぐクラーラがきみの朝の準備をしに来るのに、国境どころか朝食にすら行きたくないくらいだ」

 顔を隠す両手を外され、サリーシャの顔を覗き込んだセシリオが困ったように笑う。再び腰に手が回され、しっかりと抱き寄せられた。優しく唇を重ねながら、サリーシャは込み上げる幸福の中に身を沈めた。


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